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【連載コラム】52歳からの起業1年目のリアル(第4回)時間は自由、でも“孤独”は自由じゃない──ひとり仕事の静かなる敵

通帳の数字とにらめっこし、売上ゼロの崖っぷちを駆けずり回った日々
その熱狂が少し落ち着いたとき、私を待っていたのは
「お金」や「案件」よりも厄介な、静かなる敵でした。

その名は「孤独」。会社という組織から抜けた自分に、
それは音もなく忍び寄ってきました。

今回は、自由と引き換えに手にした“ひとり仕事のリアル”をお届けします。

静まり返った部屋で、気づいてしまったこと

「好きな時間に、好きな場所で、好きな仕事ができる」

会社員時代の私にとって、それは何物にも代えがたい理想の働き方でした。
事実、起業してしばらくは、自分の動き方ひとつでカレンダーが埋まっていく手応えに、
確かな充実感を感じていました。

売上ゼロの危機を乗り越えるために無我夢中で動きまわり
カレンダーが予定で埋め尽くされることさえ心地よかったのです。

リモート会議でぎっしりだった会社員時代とは、全く逆の気持ちでした。
しかし、事業が少し落ち着き、自宅のデスクで一人、
パソコンに向かい次の戦略を練っているとき、ふと思いました。

「あれ…俺、今日、誰ともまともに話していないな」

夜になり、しんと静まり返った部屋に響くのは、自分のキーボードを叩く音だけ。
カレンダーは埋まっている。キャッシュフローも、
あの悪夢のような日々を思えば嘘のように安定している。
それなのに、胸の真ん中にぽっかりと穴が空いたような、ひんやりとした感覚。

それは、紛れもなく「孤独」という感情でした。

「ちょっといい?」が言えない現実

管理職だった頃は、常に誰かの声が周りにありました。
たとえリモートワークでシェアオフィスの個室にいても、Teamsを開けばメンバーの顔が並んでいる。
「辻村さん、この件どう思います?」
「ちょっと壁打ち、付き合ってもらえませんか?」
――そんな何気ない会話が、どれだけ自分を助けてくれていたことか。

独立すれば、そのすべてがなくなります。

「この提案書、本当にこれでクライアントに刺さるだろうか…?」
「新しいサービスのアイデア、悪くないと思うけど、独りよがりじゃないか?」
「お客様からクレームが…。まず、誰に相談すればいいんだ…?」

ChatGPTに壁打ち相手を頼んでも、最終的な意思決定と責任は、
すべて自分一人の肩にのしかかります。
正解が分からない道を、たった一人で進むしかない。
小さな成功を手にしても喜びを分かち合う仲間はおらず、流れで飲みにいくこともない。
失注したり、低い評価を受けたりしたときに
「まあ、次頑張ろうぜ」と肩を叩いてくれる仲間もいないのです。

「自分しかいない会社だから、心が折れてはいけない」と言い聞かせ、
働く場所をカフェに変えてみたり、あえて雑踏の中に身を置いたり。
なんとか「一人ではない」と感じられる場所を探したことも一度や二度ではありません。

名刺の山が教えてくれた、本当の“つながり”

そんなとき、以前ある中小企業の社長が
「仲間と毎日飲みに行っているから寂しくないよ」と笑っていたのを思い出しました。
私も「外に出よう。とにかく人と会わなければ」と行動を始めます。

焦りに駆られ、手当たり次第に異業種交流会やセミナーに顔を出しました。
しかし、そこで待っていたのは「すごいですね!」「頑張りましょう!」という
中身のない言葉の応酬と、あっという間に溜まっていく名刺の山。

その夜、自宅で一人、もらった名刺の束を眺めながら愕然としました。顔と名前が一致しないのです。

名刺交換した方とSNSでつながってメッセージをしても返信がない。そんなことばかりでした。

孤独を埋めるために動いたはずが、まるで街角でティッシュを配るような行為の末に、
むしろ自分の空虚さを突きつけられただけでした。

「これは、違う…」

そのとき、ふと頭に浮かんだのは、起業初期に手を差し伸べてくれた方々の顔でした。
彼らは会社の看板ではなく、「辻村裕寛」という人間そのものを見て、
仕事を共にし、力を認めてくれた。
そうして、つながりは太くなっていったのです。

自分に必要なのは、ただ名刺交換をする相手ではない。
仕事の方向性や中身を認め合い、互いを高められる「仲間」なのだと。
数じゃない、深さなのだと痛感しました。

本気の人の言葉に宿る「ありたい姿」

「助けてほしい」と待っているだけでは、道は拓けない。
そう考え直し、私は、また改めて覚悟を決めました。

「まずは、自分から与えることから始めよう」

とはいえ、実績もまだない自分に何ができるのか。
「こんな自分がしゃしゃり出ても、迷惑がられるだけじゃないか?」
――そんな不安が、何度も頭をよぎりました。

それでも、組みたいと思う人に会いに行き、彼らの強みを理解することから始めました。
そして、自分の営業活動の中で「この話、あの人と組めば面白そうだ」と感じれば、
「一緒に提案しませんか?」と声をかける。

SNSで緩やかに仲間を募集し、様々な人と対話する。
30分リモートで話すだけで、人物像が見えてきました。

仕事の合間に50人ほどの方と面談し、意見を交わす中で、気づいたことがあります。
本気で何かを成し遂げたいと思っている人は、言葉に「ありたい姿」が宿っているのです。

会社を辞めて知った、社会全体がパートナーになる働き方

会社を辞めた今、社会全体が協業できるパートナーの宝庫なのだと知りました。
自分の気持ちさえあれば、対話を重ね、仕事を共にする中で、信頼できるネットワークは構築できる。
まだ「仲間がいっぱいいる」という状態ではありませんが、確実にその輪は広がり始めています。

会社員時代は「仕事を依頼され、使われる」関係でしたが、
今は「お互いが使い、使われ、価値を創出していく」関係です。
この仕組みを知ったとき、孤独で冷え切っていた心が温まっていくのを感じました。
自分が、この社会と再び接続できた手応えです。

「孤独」とは、一人でいる状態のことではない。
社会の中で、自分の存在価値や役割を見失ってしまう状態なのだと、このとき、私は身をもって知ったのです。

次回予告

ひとり仕事の孤独と向き合い、「Give」の精神で動き始めたことで、
私の周りには少しずつ信頼できる仲間が集まり始めました。
その中でも特に大きな転機となったのが、ネクサライズを支援してくれるメンバーとの連携でした。

次回は、一人でできる仕事量はAIを活用することで飛躍的に増えましたが
人がやらないといけない仕事の効率化は非常に難しく
案件とタスクの山に埋もれた中で始めた仲間さがしが
会社を少しづつ変えてきました。

社員ではないが一緒に動いてくれるメンバーやパートで支援してくれるメンバー
いかにして私の事業の新たな可能性を切り拓いてくれたのか、
そのリアルな体験をお話しします。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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辻村裕寛(つじむらやすひろ)代表取締役兼CEO

IT系ベンチャー企業、SIer、コンサルティングファームを経て独立起業。現在は、働きがいと豊かさで次世代が夢を描ける社会を創るをMissonに、企業業と働く人々へのコンサルティングで持続的な変革を支援し新しい価値を創造ことをvisionに掲げ活動しております。お客様には①「変化を見抜き価値を創る」コンサルティング、②「学びで育む次世代の成長」を支える研修講、③「知恵を届け未来を動かす」執筆サービスを価値としてお届けしております。