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【連載コラム】52歳からの起業1年目のリアル(第3回)「自分事」で乗り越えた売上ゼロの崖っぷち

会社員時代の「当たり前」が通用しない世界

前回は、起業直後のキャッシュフロー危機についてお話ししました
小規模事業者では経費を大幅に削る余地はなく、
案件を失えばすぐにキャッシュフローが止まります。
→ 中小企業庁:中小企業白書(倒産の圧倒的多数の理由が「販売不振」)

会社員時代は違いました。
案件が一時的に途切れても給与は止まらない。
営業に切り替え、年度末に数字を合わせればよかったのです。
それでも胃は痛みましたが、「給料は必ず出る」という安心感がありました。

しかし独立すれば、案件がない時間はそのまま「売上ゼロ」です。
いくら営業して提案しても、契約・入金されるまでは1円にもなりません。
この“当たり前”が、想像以上に重くのしかかってきました。

唯一の案件、その安堵を打ち砕いた一言

私の起業は幸運なスタートでした。
月100万円規模のコンサル案件が立ち上がり、4か月は安心できる状況。
スケジュール帳に案件予定が書き込まれ、「しばらくは安泰」と胸をなで下ろしていました。

しかし契約終了を目前に、支援企業の方から一本の連絡が入ります。

「辻村さん、次の予算が確保できていないらしいんです…」

耳を疑いました。通常なら契約期間の半分を過ぎたら次期契約の準備を始めるものです。
最終報告会直前で「予算がない」は異例中の異例。
悪い予感は的中し、順調だった案件は報告会を最後に終了。
描いていた1年先までのロードマップは一瞬で消えました。

甘かった想定と「やばい」という現実

売上の柱を一気に失いました。
複数のエージェントに登録していましたが、すぐに案件が決まるほど甘くありません。
スキルの完全マッチがなければ面談で落とされます。
しかも週4日以上の専従案件が多く、当時の私のスタイルには合いませんでした。

私は「一つの案件に専従しない」と決めていました。理由は2つです。

  • 会社員時代と同じ働き方に戻りたくなかった
  • 将来、コンサルノウハウを活かして事業を立ち上げたかった

しかし、案件を失って初めて理想と現実のギャップを痛感します。

「やばい」

一つの大口案件に頼り切っていた自分の甘さを、心底悔やみました。

「自分事」で動き続けた日々

悔やんでも状況は変わりません。
ここからが本当の「行動」の始まりでした。

まず受け入れたのは、「起業1年目の自分のことなど誰も知らない」という現実。
ならば、とにかく露出を増やそうと決めました。

  • 名刺をすべてスキャンし、過去のつながりに起業の挨拶を送付
  • イベント・交流会・学会発表など可能性のある場に積極参加
  • コンサル品質を高め、既存チャネルを太くする
  • ホームページやメルマガを継続発信(数十人でも見てくれている人がいればチャンスになる)

意識も変わりました。「誰かが紹介してくれる」ではなく、

「自分で仕事をつくる」視点への転換です。

時間と体力の許す限り動き続けました。会社員時代にはできなかったペースです。
土日を返上しても疲れを感じず、むしろ未来を自分で切り拓く充実感で満たされていました。
「自分事として動く」という言葉の意味を、初めて本当の意味で理解した瞬間でした。

崖っぷちが見せてくれた景色

こうした泥臭い活動は少しずつ成果につながりました。
打率は1割に満たなかったものの、蜘蛛の糸だと思っていたつながりが、

シンポジウム論文受賞や全国研修の登壇、
研修講師採用など中長期的な成果に結びつきました。
短期的にも複数のコンサル案件を獲得し、結果的に計画以上の売上を達成。
むしろリソース不足で仲間探しを始めるほどになりました(この話はまた別の機会に)。

もしあの案件が順調に続いていたら、
私は安住し、「自分事」として動く覚悟を持てなかったかもしれません。
崖っぷちに立たされたからこそ見えた景色がありました。

起業すれば必ず腹を括るタイミングが訪れます。
そして動いてみることで道が開け、やりたいことも明確になります。
「動くことでしか何かはつかめない」──これが今回の大きな気づきです。

次回予告

売上の危機を乗り越えた一方で、私を「孤独」も感じていました。
時間も裁量も自由。しかし決断も責任もすべて一人。
そんな日々でどうバランスを保ったのか。

次回は、
「時間は自由、でも“孤独”は自由じゃない──ひとり仕事の孤独と向き合う」
をテーマにお届けします。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

辻村裕寛(つじむらやすひろ)代表取締役兼CEO

IT系ベンチャー企業、SIer、コンサルティングファームを経て独立起業。現在は、働きがいと豊かさで次世代が夢を描ける社会を創るをMissonに、企業業と働く人々へのコンサルティングで持続的な変革を支援し新しい価値を創造ことをvisionに掲げ活動しております。お客様には①「変化を見抜き価値を創る」コンサルティング、②「学びで育む次世代の成長」を支える研修講、③「知恵を届け未来を動かす」執筆サービスを価値としてお届けしております。