「あと10年、これを続けられるか?」52歳、安定を捨てて起業したコンサルタントのリアル
なぜ、52歳で起業したのか? この連載コラムに込めた想い
「52歳で独立しました」
そうお話しすると、多くの方に「すごい覚悟ですね」「思い切りましたね」と言われます。
確かに、客観的に見ればそうだったのかもしれません。
長年勤めた会社ではキャリアを築き、収入も役職も安定。
外から見れば“順風満帆”そのものだったと思います。
しかしその裏側で、私の心と身体は、もうこれ以上は無理だと悲鳴を上げていました。
このコラムは、「さあ、あなたも起業しよう」と無責任に背中を押すものではありません。
ただ、「今のままで、本当にいいのだろうか」と感じたとき、何かのヒントになれば嬉しく思います。
私自身が、社会と再び自分らしく接続しようともがく中で、どんな景色が見えるのか。
そんな“起業1年目のリアル”を、包み隠さずお届けします。
「あと10年弱これを続けられるか?」──問いはそこからでした

私は長年、SIer・コンサルティング業界の第一線にいました。そして、数多くの企業のDX化や大規模な業務改革プロジェクトを率いてきました。
ありがたいことにディレクター職まで任され、素晴らしいお客様、そして多くの仲間達に恵まれていました。
しかしその裏側では、高い目標数字への個人的なプレッシャー。
組織内での事業方向性やリソース配分の調整、プロジェクトで日々生じるトラブルシュート。
加えて、昨今の「働き方改革」のしわ寄せという、巨大な矛盾に挟まれていました。
「残業は禁止。でも、成果は絶対に落とすな。」
この言葉は、多くの企業の管理職の方が直面しているジレンマではないでしょうか。
現場のメンバーが抱えきれないタスクは、すべて管理職である自分にのしかかってきます。
寝ても疲れが取れず、休日も頭は仕事のことでいっぱい。
そんな日々の中で、ふと頭をよぎった問い。それが、すべての始まりでした。
「あと10年、心と身体をすり減らしながら、これを続けられるのだろうか?」
決定打になった“いくつかの事件”と、すがる想い
詳細はここには書けませんが、いくつかの出来事が重なりました。
この時、「自分の人生を本気で立て直さなければいけない」
そう悟る瞬間が訪れました。
それは、怒りや不満というよりは「潮時だ」。
心の底から理解した、という表現が近いかもしれません。
同じ業界で転職しても、根本的な問題は解決しない。長年の経験から痛いほどわかっていました。
だからこそ、私の選択肢は「独立」しかありませんでした。
もちろん、クライアントのあても、事業の見通しもない。
あるのは「これからの生活はどうするのか?」という、不安だけでした。
そんな不安の中で、私が唯一すがることができたもの。
それは皮肉にも、前職で何度も修羅場を乗り越えるために、自分自身に言い聞かせてきた言葉。
プロジェクトで問題が発生すると、いつもこう言ってチームを鼓舞していました。
「大丈夫。必ずどうにかする。」
それは、信念やスキルというより、「もうこれに頼るしかない」という必死な想いでした。
そう自分に言い聞かせることで、ようやく次の一歩を踏み出す覚悟を決めたのです。
“こんなやり方もあるのか!”という、一つの事例として
この連載では、起業からの1年間を、ありのままに振り返っていきます。
成功も失敗も、かっこ悪い部分もすべて含めてです。
スマートな起業ノウハウをお伝えするものではありません。
私の経験が、「こんな視点もあるのか」「こんなやり方でもいいのか」という、
誰かにとっての新たな選択肢を見つける、ささやかなきっかけになればと思っています。
もし今、あなたが「このままでいいのかな」と少しでも感じているのなら。ぜひ、この連載を覗いてみてください。この試行錯誤の記録が、あなたの明日を考える上で、何か少しでもお役に立てれば幸いです。
次回【第1章:気づきと決意】へ
そんなふうにして、私は52歳で独立という選択をしました。
“理想の未来が見えていた”わけではありません。
むしろ、分からないことだらけ。不安の方がずっと大きかったのが事実です。
でも、だからこそ、自分に問い続けることになったのです。
「名刺がなくなったら、私は誰になるのか?」
「定年後、本当にやりたいことは何だったのか?」
次回からは、第1章「気づきと決意」と題して、
独立を考え始める前後に直面した“50代ならではのリアルな問い”を振り返っていきます。
「このままでいいのか?」
そう感じ始めたとき、何が起こったのか?
どんな違和感や揺らぎが、私を動かし始めたのか?
あなた自身の現在地と重ね合わせながら、読んでいただけたら嬉しいです。
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辻村裕寛(つじむらやすひろ)代表取締役兼CEO
IT系ベンチャー企業、SIer、コンサルティングファームを経て独立起業。現在は、働きがいと豊かさで次世代が夢を描ける社会を創るをMissonに、企業業と働く人々へのコンサルティングで持続的な変革を支援し新しい価値を創造ことをvisionに掲げ活動しております。お客様には①「変化を見抜き価値を創る」コンサルティング、②「学びで育む次世代の成長」を支える研修講、③「知恵を届け未来を動かす」執筆サービスを価値としてお届けしております。