資料作成ノウハウシリーズの第4回目です。前回は「-3.会議で説明する資料を作成する場面 ー」で、会議で利用する資料作成ポイントを書きました。これまでの3回にわたるシリーズでは、構想段階、プレゼンテーション時、会議で説明する場面という利用場面ごとに資料作成のポイントをお伝えしました。今回は、それらすべてに共通する基本のポイントをご紹介します。相手に伝わる資料」を作成するためには、以下の点を意識することが重要です。
【目次】
1.一貫性のあるデザインを保つ
資料全体のデザインに一貫性を持たせることで、読み手に安心感を与えるだけでなく、内容が理解しやすくなります。コンサルティング会社勤めの時代によくあったのが、チームで一つの成果物をお客様に納品するのですが、各ページを分担した際に無意識に自分の色使い、フォントサイズにしてしまうことで、そのページだけ違う本のようになることがありました。そうならない為にも、マスターシートなどを使い、余白サイズも決めて作成すると統一感がでます。以下のポイントを意識しましょう。
- フォントとフォントサイズを統一する:タイトル、本文、注釈など、適切なフォントサイズを設定。
- 色使いを揃える:ブランドカラーやテーマカラーを活用し、重要な部分にはアクセントカラーを使う。
- 余白やレイアウトを意識する:情報が詰め込みすぎにならないように、適度な余白を設ける。
このような細部への気配りが、資料全体を通して「伝わる資料」を支えるのです。完成した資料を一歩引いて眺めてみて、「全体が整っている」と感じられるかどうかを確認することが大切です。
2. シンプルかつ明確なメッセージを心がける
情報を詰め込みすぎると、かえって伝わりにくくなります。資料作成中は全体骨格があっても一つのページの作成に着手すると、思考がぐるぐるまわりいろんなことをスライドに書いてしまいます。作成しているときは仕方ないですが、少し時間をおいてから改めてチェックして勇気を出して削除する作業をすることが大事です。以下のポイントを押さえて、シンプルな資料を目指しましょう。
- 1スライド1メッセージを意識する:1枚のスライドで伝える内容は1つに絞りましょう。タイトル、リード文、ボディー部分でバラバラなことを書いていないかをチェックすることも大事です。
- 不要な情報を削る:本当に必要なデータやグラフだけを使い、装飾は最小限にして見やすくする。数字は表にするとわからなくなりがちですのでグラフにして一目でわかるようにする。
- 視覚的な要素を活用する:中身が詰まった資料であるコンテンツリッチを意識すると様々な情報を盛り込む、その結果文字が多くなることがあります。「なんかこの資料黒いね?」と言われるパターンです。図表やイラストを使って、視覚的に伝えるようにしましょう。
簡潔な資料は、相手にとって「負担が少なく、理解しやすい」ものになります。一度立ち止まって、「この情報は本当に必要か?」と自問してみる習慣をつけましょう。
3. 相手の視点を常に意識する
どんなに優れた資料でも、読み手の視点に立っていなければ伝わりません。相手が求めている情報や関心事を把握し、それに応える内容を盛り込むことは「-1.構想段階で必ず考えておくことー」でも買いました。ここの視点とは資料を読む視線がどう動くかを意識して資料を作ることです。例えば、シンプルデザイン、統一感を持たせることに加えて
- 配色の最適化:高コントラスト(背景と文字の色差)をたもち文字を読みやすくする、カラーユニバーサルデザイン(CUD)を意識して、色覚特性を持つ人にも認識しやすい配色にするなどが挙げられます。
- 視線誘導:人間の目線は無意識のうちにある程度決まった形で動きます。このルールに基づいて紙面のデザインやレイアウトを設定することで読みやすい資料にできます。目線は「Z型」「N型」「F型」の3パターンで動くので、資料の文章や図などをこのツールに沿って作ると読みやすくなります。
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また、目線を意図的に誘導するために、文字大きくする、部分的に色を変えることも有効です。自分が本当に見て欲しい所はどこにあるのかを意識して、大事な内容を目線の動きの最後に書くことも有効です。
今回ご紹介した3つのポイントは、資料作成の基本ですが、それは同時に、私たちが資料作成を通じて「相手とどう向き合うか」を考える姿勢にもつながります。「「頭がいい人」といわれる文章の書き方」に、”文章は自分の書きたいことではなくて相手が読みたいことを書く”という一節があります。相手の立場に立ってシンプルで読みやすい資料を作成することで、相手の時間を大切にし、自分の意図を誠実に伝えることができます。資料作成を続ける中で、「どうすればもっと伝わるだろう」と悩むこともあるかもしれません。その一つ一つの悩みが、より良い資料を生み出す力になります。時には立ち止まり、反省し、改善しながら、自分らしい資料を完成させてください。
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