生成AI時代でも役立つ相手に伝わる資料の作成方法 -2.文書の利用場面を意識すること#1ー

ノウハウ

 資料作成ノウハウシリーズの第2回目です。前回は「生成AI時代でも役立つ相手に伝わる資料の作成方法 -①構想段階で必ず考えておくことー」で、文書を作成する前に考えておくことについて書きました。 今回は構想終了後、文書作成に入る前に「文書を利用する場面はどこなのか?」を考えます。プレゼン、会議、リモート会議など、利用場面によって作り方を変える必要があります。

 なぜ、これが重要なのでしょうか?それは、利用シーンによって文書の作り方を変える必要があるからです。私の場合、大きく2つに分類しています。「ある程度大きな会場で説明する場合(#1)」と「事前配布や画面に映して説明する場合(#2)」の2パターンです。さらに、「双方に共通して意識していること(#3)」もあります。それぞれについてお伝えしたいことが多いので、3回に分けて説明していきたいと思います。

【「ある程度大きな会場で説明する場合(#1)」の目次】

1.文字は大きくする

2.1スライド1メッセージを忠実に

3.アニメーションを有効活用する

1.文字は大きくする

 大きな会場や研修向けに資料を作る場合、配布資料があっても後方の人がスクリーンに映し出される資料を読める、書いてある事がわかる必要があります。最も意識すべきは、文字の大きさ、資料イメージ図が遠くからでもわかるようにすることです。具体的には

  • ページタイトルのフォントサイズは28pt以上
  • 冒頭に記載するメッセージのフォントサイズは32pt以上
  • 説明する文字は最低で18pt以上
  • イメージ図は遠目からでも雰囲気が伝わる写真を選び、
    ポインターを当てた際に手元のテキストで同じ場所がわかるようにする。

これにより、会場の後方に座っている人にも説明ページを分かりやすく伝えることが可能になります。後ろに座っているからといってやる気がないわけではありません。「後ろが好きなんです」という人も多いので、しっかりと説明が届くようにスライドを作成しましょう。実は私も後ろ派です。

2.スライド1メッセージは忠実に

 1枚の資料でいろいろなことを話したくなりますが、そこはぐっと我慢しましょう。1枚のスライドで伝える内容は1つに絞ることが大切です。「1スライド1メッセージ」という基本を忠実に守ることが、わかりやすい資料作りの第一歩となります。異なる内容やシナリオを伝えたい場合は、別のスライドに移すのが賢明です。もし適切な場所がない場合は、その内容を資料から省くことも検討しましょう。

 話し手が説明しづらいと感じるページは、聞き手も理解しにくいものです。例えば、上のサンプルでは「製造業がサービスを提供するのは大変だ」というメッセージを伝え、その理由をスライド内に記載しています。ここで、説明者は「では、どのようにサービス提供を変えていくのか?」を同じスライド内で説明したくなるかもしれませんが、「1スライド1メッセージ」に忠実に。つまり、「製造業がサービスを提供するのは大変だ」=”問題”と、「では、どのようにサービス提供を変えていくのか?」=”方法”、で、別スライドで分けて説明する方が、より分かりやすくなります。

 「1スライド1メッセージ」といっても、資料内で複数の箇条書きや図表を使用しても構いません。メッセージを効果的に伝えるために必要な要素は複数あってもよいのです。ただし、1つのスライドで伝えたいメッセージが複数になると、説明が難しくなり、聞き手も理解しにくくなります。自分で読み返して説明しづらいと感じるページがあれば、思い切ってメッセージを絞り込むことをおすすめします。

3.アニメーションを有効活用する

 ある程度大きな会場で資料を投影する際は、アニメーションの活用が効果的です。ただし、むやみにアニメーション効果を盛り込むと、聞き手が理解しにくい資料になってしまいます。以前、アニメーションを多用したプレゼンを見たことがありますが、文字や図が絶え間なく動くスライドに注意を持っていかれ、スピーカーの話が全く頭に入らなかった経験があります。PowerPointのアニメーション機能には多種多様な選択肢があり、迷ってしまう方も多いでしょう。しかし、基本的にはフェードのようなシンプルなものを活用するのが得策です。つまり、スライドにほんの少しの動きを加えるだけで、十分に聞き手の注目を引き付けることができるのです。

私がアニメーションを使うときは、自分用、聞き手用に分けて使っています。
自分用の場合は

  • スライドを説明しやすいように説明の順番に従いアニメーションを使う
    ⇒ 映し出せる順番で説明できるので説明しやすい

聞き手用に利用する場合は

  • 15分ごとに聞き手の集中力を維持するために使う
    ⇒ 変化を加えることで聞き手の集中力を持続させる
  • 少しずつ情報を伝えたい時に使う
    ⇒ きちんと内容を理解してもらうようにする
  • メモを取って覚えてもらいたい時に使う
    ⇒ セミナーへの参加姿勢を積極的にする

 下記の例は、配布資料には空白を作り、説明資料にはデカルトの絵をフェードさせています。
実際の研修では、何だこの絵は?と聞き手に思っていただき、「方法序説」でデカルトが書いている問題解決のアプローチ方法を説明します。変化を持たせることで注目度を高め、更に、口頭で大事なことを伝えることで、聞き手が極的にメモを取るようになるのです。

説明資料では右側がアニメーション

研修配布資料は右側が空白

 今回紹介した3つのポイントですが、初めからこれらポイントを網羅し、資料を作るのは難しいかもしれません。なので、まずはできるところから挑戦してみてください。また、「今回は完璧な資料ができた!」と思っていても、必ずしも聞き手が皆、前のめりで説明を聞いてくれるとは限りません。仮にあなたが一生懸命資料を説明している時、机にうつ伏せになっている方がいたとしても、そっとしてあげてください。逆に、説明に対してうなずいてくれる人がいれば、その方々に目線を配りつつ、自分を勇気づけながらメッセージを伝えられると良いと思います。

このような資料作成の養成研修も可能です。新入社員向けの基礎編から中堅層向けの応用編まで承っておりますので、お気軽にこちらからお問合せください。

辻村裕寛

代表取締役兼CEO

東京都台東区の下町生まれ。IT業界で約10年、コンサルティング業界20年弱、ディレクターになったのちに独立。現在は、中小企業診断士、PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の資格を活かしつつ、大企業から小規模事業で幅広規模の企業でサービスを提供。コンサルティングノウハウのコラム執筆、研修講師業も提供しております。

 森京

ライター

コンサルタントとして働いている傍ら、ライターの仕事をしています。最近はお家ご飯のクオリティを上げるべく、食器集めにハマっています。