コンサルタントとして大事にしてること

 先日、私がコンサルタント会社に転職した際、初めてJoinしたプロジェクトのPMと食事をする機会がありました。その方は、既に別のコンサルタントファームへ移籍し、いまやかなりの役職まで上り詰めた方です。皆、年齢は重ねたものの当時のままという懐かしさもあり同窓会のような会食でした。移籍前の先輩は、経営層の一新で自分のやりたいことができなくなってしまっという苦渋決断でその会社を去りました。当時を重い返すと、笑顔で会話してくれていましたが、苦悩がにじみ出ている顔に胸を痛めていた記憶があります。ですが、数年後、別の場所で目覚ましい活躍を遂げたことは、ただただ「さすが」の一言に尽きます。本当にすごい人です。

初めてのコンサルティング会社で、何もかもが新しく、勝手が分からなかった日々、心身ともにきつかったあの頃、私の支えとなったのが、そのPMから教えてもらった資料でした。

【目次】

1.入社初日のオリエンテーション途中でキックオフMTG

 入社した日のことは、今でも鮮明に覚えています。飲み会では笑い話として語られるエピソードですが、当時の私は本気で戸惑いました。
 その日、社内オリエンテーションを受けている最中、突然「プロジェクトのキックオフに出てくれ」と声をかけられました。何も知らないまま会議室に飛び込み、自己紹介をする流れになったのですが、緊張のあまり「今日入社したばかりの辻村です!」と言ってしまい、場の雰囲気の澱み、上司やメンバーからの視線は「お前やっちゃってるよ」と冷ややかそのもの。今思い返せば、「それは言わないよな…」と恥ずかしくなります。このエピソードは今でも皆さんと会うたびに蒸し返され、毎回妙な汗をかきます。

2. 勘違いコンサルタントが頼った2枚のスライド

 システムインテグレータからの転職だった私は、「システム構築PMOなら何とかなる」と勝手に高をくくっていました。しかし、現実は甘くありませんでした。スライドの構成がなっていない、日本語が伝わらない、課題表の内容が的外れ、誤字脱字が多い…。毎日のように「で、結局何が言いたいの?」と問い詰められる日々が続きました。その頃の私は、「システム構築もやったことがないくせに…」と上司に心の中で反発していましたが、振り返ると、自分の力量不足を痛感せざるを得ません。資料一つ取っても、そこに表れるのはコンサルタントとしての実力で、その基準に達していなかっただけでした。そんな自分がよりどころにしたのが、プロジェクトPMが説明してくれた2枚のスライドでした。そのスライドには、コンサルタントとしてどう考え、どう行動すべきかがシンプルに示されていました。それは、私が迷ったときに立ち返る「軸」となり、今でも胸の中に刻まれています。

3. 当時から変わらないコンサルタントとしての軸

 当時の自分にとってのコンサルタントは、会社の経営、数字が分かりお客様に戦略フレームを使いアドバイスできるかっこいい人。という浅はかなイメージをもっていました。ですが、最初にJoinしたプロジェクトでの経験、そして、この2枚のスライドで動かされました。
 コンサルタントはお客様と同じ目線で課題を考えともに座って考えられる人。そのうえで、ロジカルに考え、道筋を立ててスライドを作成し、お客様の心も動かせる人という明確なイメージを持てました。さらに、頭でっかちにならずに行動できる人。自分にとってのコンサルタントの軸は、実はこの2枚のスライドから生まれています。
 本当によい先輩とメンバーに出会えたと今でも感謝しています。仕事に対してはある程度の自信は必要ですが、謙虚な気持ちを忘れてしまうと、本当に大事なことに気が付かなかったり、こうした貴重な出会いもスルーしてしまうものです。いつまでも、謙虚に学ぶ姿勢を忘れないようにしたいと改めて思った会食でした。

辻村裕寛

代表取締役兼CEO

東京都台東区の下町生まれ。IT業界で約10年、コンサルティング業界20年弱、ディレクターになったのちに独立。現在は、中小企業診断士、PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の資格を活かしつつ、大企業から小規模事業で幅広規模の企業でサービスを提供。コンサルティングノウハウのコラム執筆、研修講師業も提供しております。

 森京

ライター

コンサルタントとして働いている傍ら、ライターの仕事をしています。最近はお家ご飯のクオリティを上げるべく、食器集めにハマっています。