会社の帰り道に自転車を走らせていたら突然ぽつぽつと雨が降り始めた。 「やばい!」と思ったものの、傘をさすこともできないので、仕方なく自転車を漕ぎ続けた。 そんな時、ふと思い出したのが「50mm以下は雨じゃない」という言葉だった。
あれは入社間もない研修時代の頃。 長い研修が終わり、オフィスから出る瞬間、急に天気予報にはなかった雨が降り始めた。 オフィスから駅までは歩いて5分。小走りしながら駅まで向かうとしても微妙な距離だった。一緒に帰ろうとしていた同期も傘を持っていなかったため、 オフィスで雨が止むのを待つことにした。
その時、ある同期が「50mm以下は雨じゃない」と言い捨て、 傘もささずに、しかも走る様子も見せずに駅へ向かっていった。その姿がなぜか輝いて見えたのと同時に、「50mmって、相当の雨量じゃない?」とも思った。 「30mmの雨なら傘なしなのか?」と真面目に考えてしまったのは、きっと私だけじゃなかったはずだ。
そんな同期の姿を思い出しながら、「50mm以下は雨じゃない」 と自分に言い聞かせ、急足でペダルを漕いだ。ただ、風も吹いていたため、家に着いた時はしっかりずぶ濡れになってしまった。
改めて、雨量50mmという閾値は強者感があるが、例えば海外だと小雨くらいなら傘をささないことも多い。私たちは繊細すぎるのか?とも思うが、周囲につられている気もする。例えば霧くらいの小雨で、濡れてもいいシチュエーションであれば、傘をさすめんどくささと不自由さが勝ってしまう気もする。
傘をさすかささないか以外にも、気持ちの持ちようで、物事の見方が変わるものは多い。例えば3秒ルールの扱いや賞味期限。3秒ルールは落ちた場所によると思うが、賞味期限は経験値の積み重ねだと思っている。
一時、賞味期限切れの納豆はいつまで大丈夫なのかが気になってしまい、冷蔵庫に納豆を眠らせていたことがあった。動機はご想像の通り、そもそも腐っているんだから賞味期限もクソもないだろ!という、いい加減な憶測。もちろん、納豆にも賞味期限はあるもので、検証を通じてきちんと自分の目で発酵食品の腐敗を確認することができた。なので、今は納得感を持って納豆の賞味期限と折り合いをつけている。
私にとっての雨の閾値も、これから折り合いをつけていくのかもしれない。50mmはないと思うが、小雨くらいであれば颯爽と歩くようになるのかもしれない。とはいえ、大人である以上、雨に降られるかどうかに関わらず、常に折りたたみ傘を持ち歩く備えを忘れずに過ごしたいと思います。
