生成AI時代でも役立つ相手に伝わる資料の作成方法 -2.文書の利用場面を意識すること#2ー

資料作成ノウハウシリーズの第3回目です。前回は「生成AI時代でも役立つ相手に伝わる資料の作成方法 -②文書の利用場面を意識すること#1ー」で、大きな会場でプレゼンテーションする際の資料作成ポイントを書きました。

今回はその続編、利用シーンを踏まえた文書作成2パターンのもう一方である「事前配布や画面に映して説明する場合(#2)」です。大きな会場でのプレゼンテーションとは異なり、資料を見ながら説明するケースは、定例ミーティングや会議体等が該当します。こうした会議体では、会議目的を達成できるように会議を設計し、設計に沿った資料を作成するというのが大きなポイントです。

【「事前配布や画面に映して説明する場合(#2)」の目次】

 1.会議アジェンダを用意して議論することを明確に

 2.文字だけでは飽きるので構造化、ポンチ絵を活用する

 3.資料の中では論点を設定して議論のポイントを絞る

1.会議アジェンダを用意して議論することを明確に

 仕事において文書を作成する理由は様々な目的がありますが、今回は、自分が考えていることを理解していただき、何らかの行動に結び付けたい場合などを想定して記載します。このケースでは、文書の良し悪しだけではなく、説明する場面の参加者、誰に理解いただくのか、説明はどんな順番で行うのか、どんな質問を想定するかなどの会議建付けと文書の連動が重要になります。

 私の場合は、最初に会議アジェンダを作成します。その理由は、会議目的、会議時間、説得する方や職位を把握し、どのように説得するか計画しやすくするためです。1時間の会議であれば長くても説明は30分で、残りは質疑応答にする。説明する方のテーマに対する理解度、職位を踏まえた関心毎を事前に整理し、説明資料の中身を設計します。早速、文書作成商法について説明します。説明資料の設計方法は、Word、PowerPointとも共通で、以下の順番で進めています。

  1. 会議アジェンダを作成する
  2. 文書全体のタイトルをつける
  3. スライド・章立てのタイトルをつけ流れを確認する
  4. 各章の概要を40文字程度のリード文で作成する
  5. 文書中にもっとも重要になるページの目星をつける(キーラーコンテンツ:これで相手を説得)
  6. 各ページで説明したいことを文章化する
  7. ぱっと見でわかるように文章を構造化する
  8. 必要に応じて写真やポンチ絵を作る

という流れです。いや、書き直すと長い手順ですね。特に1~3で文書構成のロジックを固めて、どのページで相手を説得するかの4.キラーコンテンツ設定です。ここが本当に大事です。この手順を踏んで資料化を進めることで、会議場面を想定しゴールに繋がる文書の骨格を作成することが可能になります。

2.文字だけでは飽きるので構造化、ポンチ絵を活用する

プレゼンソフトでは自動で文章を図形化する機能があります。また、大きな会場でのプレゼンテーションではアニメーションなどで動きを作れますが、会議資料ではちょっと無理があります。そんな時、わかり易い図を使うのですが、私の場合はこれまで作ってきた資料から再利用可能なものを部品化してストックしており、また、提案書なども基本的な流れは変わらないので提案書フォーマットと作成しています。大きく、「ポンチ絵」と「文章の構造化」に分かれます。

  • ポンチ絵(概略を示す図)
    例えば、 経営・組織・業務/ミッション・ビジョン・バリュー等3階層で説明するときは三角形を使って上下関係を表現する形を多用します。下図の左の絵になります。作業手順・概要・成果物・役割分担を示すには下図の右の絵になります。こうしてポンチ絵のレパートリーを増やしておくことは作業時間の短縮に繋がりますし、ぱっと見で何を伝えたいか相手にも伝えやすくなるという大きなメリットがあります。

  • 文章の構造化
    全てのページを厳密に論理的に記載する必要はありませんが、伝えることを目的としたページは文字で論理を文字で記載するのではなく、論理の形を図を使い構造化することで読み手もロジックを簡単に理解することができるようにすることが望ましいです。例えば、帰納法で説明する際の構造化フォーマットを例示します。文字で書くだけでなく、相手に腹落ちいただくために分かり易く作成することが重要です。「現役時代によく言われたことは、難しいことを難しく書くことはだれでもできる。難しいことをできるだけ簡単に書く」この部分は忘れないようにしたい点です。

3.資料の中では論点を設定して議論のポイントを絞る

会議に入る前には、本日の会議では~の点を明確化して、次のステップに進めていきたいという場面づくりをすることが多いと思います。ですので、説明資料には、ぱっと見でこの部分を皆で議論しないといけないと、分かるようにしておくことが大事になります。ただ、資料を説明していると何となく説明してしまう、また偉い方に説明する時は緊張することも多く、言い忘れてしまうという事態を何度も経験しました。ですので、自分の場合はここが論点なんですというマークを付けるようにしています。論点を明示する時も、どういった順番で検討がスムーズに進むのかを考え番号を付けます。論点①を検討すると、論点②の検討が必要、最終的は論点③の明確化に気が付くという仕組みです。

 人類の最大の発明は文字であると言われています。言葉だけで伝えていたことが文字として残すことで、考えたことを後世につなぐことができるようになりました。現代では、Webという莫大に大きなノートに写真、映像、文字を残すことでより多くの情報を記録できるようになっています。我々はこの文字を活用して自身の考えを伝え、新たな動きを作ることもしやすくなった時代に生きています。生成AIを活用しつつも、自分のキラーコンテンツで周りを巻き込みながら仕事を進めていきましょう。

辻村裕寛

代表取締役兼CEO

東京都台東区の下町生まれ。IT業界で約10年、コンサルティング業界20年弱、ディレクターになったのちに独立。現在は、中小企業診断士、PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の資格を活かしつつ、大企業から小規模事業で幅広規模の企業でサービスを提供。コンサルティングノウハウのコラム執筆、研修講師業も提供しております。

 森京

ライター

コンサルタントとして働いている傍ら、ライターの仕事をしています。最近はお家ご飯のクオリティを上げるべく、食器集めにハマっています。