ファンの心をつなぐ新しいEC戦略に挑んだエンタメ企業の舞台裏
業界で多くのキャラクターを抱えるある企業がクライアントです。
近年ファンの行動が大きく変化していました。
SNSを起点に「推し活」を楽しむ層が拡大。
そして、キャラクターや物語を愛するファンが増加。
しかし、既存ECサイトは変化に追従できず、
その結果「ファン体験の断絶」という課題を抱えていました。
ファンの熱量をつなげない「分断の構造」
旧来のECサイトは外部委託型の仕組みで運営。
スマートフォンでの表示最適化も不十分。
複雑な決済手続き、導線もわかりにくい。
そしてアカウントやIDも分断。
途中で離脱するユーザーが多発していました。
さらに、販売データも活用できていない。
自社では「誰がどの作品を愛しているのか」が見えない。
ブランド体験と購買行動がつながらず、
イベントやSNS施策も効果検証が難しい状況だったのです。

マネージャー
「せっかくファンが盛り上がっても、次につなげられない。
それが一番のもどかしさでした。」
“構築”ではなく“再定義”――パートナーが示した視点
クライアントはDXやAI活用に強みを持つ弊社。
我々は、単なるECリプレイスではなく、骨格となる戦略策定。
そこでたどり着いたのは
「ファンの体験とデータをつなぐ中核としてのEC」
という新たな概念でした。

担当
「サイトを作り直すのではなく、
“ファンとの関係をどう再設計するか”を一緒に考えてくれた。
その姿勢に信頼を感じました。」
検討初期に、現行サイトの課題を3C分析。並行して、他社の先進事例をベンチマーク。
その結果を踏まえ、ファン層をライト・ミドル・ヘビーの3層に分解。
購買心理を、SNS投稿や購買履歴から行動特性を抽出しました。そこから導かれた結論、
“ECをブランド体験のハブに変える”――それが、今後の競争優位をつくる鍵。
「推し活型EC」へ――ファン体験を循環させる設計
新たな戦略は、三つの柱で構成しました。
- ブランド体験
作品やキャラクターの世界観を中心に据える。
ファンが没入できるデザインとコンテンツ導線を整備する。
“推しに触れ、知り、集い、支援する”流れをオンライン上で再現する。 - 各チャネルのアカウントの統合
店舗・イベント・EC・アプリをつなぐ共通IDとCRMを再設計する。
ファンの熱量データを自社で蓄積・分析する。
購買行動やイベント参加履歴をもとに、PDCAを回せる仕組みを構築する。 - OMOによるリアル連動
オンラインとリアルイベントを往来できる仕組みを導入。
これにより「体験→購買→再体験」の循環を生み出す。
この取り組みにより、ECが単なる販売サイトではなく、
“ファンとの関係を可視化し、育てる場”へ転換する。
意識が変わる。文化が変わる。
構想段階から、社内の意識にも明確な変化が生まれました。
デジタル・マーケティング・IP各部門が横断的に議論し、ファンデータを共有する文化が形成。
従来の売上中心KPIから、「推し登録率」「イベント連動CVR」「リピート率」など、
体験価値を測る指標に置き換わりました。

担当
「“ECのKPIは売上だけではない”と気づけたことが大きい。
ファンの声を“数字”として理解できるようになった。」
ブランド体験DXの、その先へ
今後は段階的にシステム開発を進め、既存モールを活用した移行期運用も並行して実施予定。
最終的には、ファンが推しと出会い、商品を手にする。
更に、仲間とつながる「プラットフォーム」を完成させる。
これを最終ゴールとして目指す形にしました。
今後は、データ分析やAIレコメンドの導入支援を通じて、
“ブランドとファンの関係性を深めるDX”に着手される予定です。
| 観点 | 変革前 | 変革後 |
|---|---|---|
| ECの位置づけ | 外部委託の販売チャネル | 自社主導のブランド体験基盤 |
| データ活用 | 顧客データ未活用 | CRM・ID統合による一元分析 |
| ファンアプローチ | 一律設計 | 層別の行動・心理設計 |
| KPI | 売上中心 | 熱量・LTV指標中心 |
「販売」から「共創」へ。
ECは、ブランドとファンが新しい物語をつくる“ステージ”。
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辻村裕寛(つじむらやすひろ)代表取締役兼CEO
IT系ベンチャー企業、SIer、コンサルティングファームを経て独立起業。現在は、働きがいと豊かさで次世代が夢を描ける社会を創るをMissonに、企業業と働く人々へのコンサルティングで持続的な変革を支援し新しい価値を創造ことをvisionに掲げ活動しております。お客様には①「変化を見抜き価値を創る」コンサルティング、②「学びで育む次世代の成長」を支える研修講、③「知恵を届け未来を動かす」執筆サービスを価値としてお届けしております。
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