分析グラフを「伝わる」資料にするために

―データの可視化からプレゼンテーションまでの実践Tips―

プロジェクトを進める中で、クライアント企業の若手メンバーと共に業務を推進する機会が増えています。そうした現場では、日々のコミュニケーションや成果物の共有のなかで、業務に役立つ小さなノウハウ(Tips)を伝える場面も多くあります。
 本コラムでは、そうした現場知に基づく「すぐに実務で使えるコツ」をテーマ別に紹介していきます。今回は、「分析したグラフを聞き手に分かりやすく伝える方法」について、ポイントを整理してお届けします。

① データ分析の目的は常に意識する

データ分析を行っていると、途中で気になる傾向や仮説が次々と浮かび、当初の目的から逸れてしまうことがあります。特にスプレッドシートやピボットテーブルなどを使っていると、分析が面白くなり、気づけば何時間も経過していたという経験がある方も多いのではないでしょうか。

重要なのは、「この分析で何を明らかにしたいのか」を事前に明確にしておくことです。
分析を始める前に、以下のような問いを紙に書いておくと良いでしょう:

  • この分析で明らかにしたいのは何か?
  • どのような状態になれば分析は完了と言えるのか?

目的を可視化しておくことで、分析の方向性がぶれにくくなり、効率的かつ的確なアウトプットにつながります。

② データの出所・構造を把握しておく

分析結果に基づいて相手を納得させるには、「このデータは信頼できるものか?」という疑問に明確に答えられることが不可欠です。分析する前に以下の項目を確認しましょう:

  • データの出所(誰が、どこから取得したか)
  • 各項目の意味(例:製品カテゴリ、顧客属性など)
  • 記号やコードの定義(例:「A=新規顧客」「B=既存顧客」など)

これらを理解せずにグラフを提示しても、聞き手にとっては「本当に信頼できるデータなのか?」という不安が先立ち、説得力を欠いてしまいます。分析の「根っこ」を押さえておくことが、伝わる説明の土台になります。


③グラフ化する

グラフ化する時のポイントは、何のグラフを使うかです。グラフは様々な形がありますが
代表的なものを上げてみると

棒グラフ: カテゴリ別に数値を比較し、 横軸にカテゴリ、縦軸に値を設定します。複数のデータセットを比較する場合は、積み上げ棒グラフやグループ化された棒グラフを使用。(: 国ごとの売上高、月ごとの利益)

  • 折れ線グラフ:
    時系列データの変化を表し、横軸に時間、縦軸に数値を取る。
    複数のデータセットを同時に表示してトレンドの比較が可能。
    (1年間の売上推移、株価の変動)
  • 円グラフ(Pie Chart):
    全体に対する各部分の割合を示す。円を各カテゴリの割合に応じて分割する。
    データの比較が難しいため、2つ以上のデータセットには向かない。
    ( 市場シェア、費用内訳)
  • ヒストグラム(Histogram):
    データの分布を視覚化する。データの範囲を区間(ビン)に分け、それぞれの区間に属するデータの数を棒で表す。データの分布やばらつきを確認するのに適している。
    ( 商品レビューの点数分布、従業員の年齢分布。)
  • ヒートマップ(Heat Map):
    データの強度や頻度を色で視覚化。色の濃淡で値を示し、複数の変数間の相関を視覚化するのに有効。
    ( 売上データの地理的な分布、相関行列。)

④プレゼン資料で押さえるべき3つのコツ

最後に、グラフを用いた資料作成の際に注意すべき点と、改善のポイントを紹介します。

×:NGなグラフ

  1. グラフタイトルが「○○のグラフ」だけで終わっているため、グラフの要素はわかるが何を意図したのかわからない
  2. 強調したい箇所が記載されていないため、人によってグラフの解釈が変わってしまう
  3. 結果的に、せっかく数字をグラフにして見やすくしても「で、何が言いたいのか?」が不明

〇:OKなグラフ

  1. 「○○は前年比で20%増加。新施策の効果が明確に」など、グラフタイトルから作成者の主張を読み取れる
  2. 重要ポイントに色やアイコンで視覚的な強調を追加する
  3. 分析目的との関係性・結論を明示して解釈を補足する

まとめ:伝わる資料には「整理」と「意図」がある

グラフやデータを活用したプレゼン資料をつくる際には、以下の3点を意識してください。

  1. 目的の明確化:分析の「ゴール」を決めておく
  2. データの理解:出所・構造・前提を押さえる
  3. 伝える工夫:適切なグラフと伝わる資料化

これらを意識するだけで、同じデータでも、伝わり方が大きく変わります。ちょっとした工夫が、現場での信頼や成果につながる第一歩です。

辻村裕寛
  辻村 裕寛