コンサルタントとして仕事を受注する際、最も大切なのは「どんな仕事をするか」よりも「どんな仕事をしないか」という軸を明確に持つことです。特に、私が経営するネクサライズコンサルティングでは、会社のミッションである「変化の時代に新たな価値を届け、日本が抱える社会課題を解決し未来を支える」に沿う仕事を選ぶことを大切にしています。
価値基準で仕事を選ぶ
先日、考えさせられる案件がありました。他業種との連携が前提となる仕事で、連携相手の意見もよく理解できました。自分が折れれば円滑に進むことも分かっていましたが、どうしてもそれができなかった。とはいえ、それが本当に正しい判断なのか?と自問自答する日々が続きました。独立したからには貫きたい信念がある。これは企業経営者や企業勤務の方にも共感いただける場面かもしれません。
当然ながら、コンサルティング業務には高単価の案件もあれば、比較的安価な案件もあります。単純に報酬だけを見れば、高単価の仕事を優先する方が合理的に思えるかもしれません。しかし、私自身はたとえ安価でもミッションに沿う仕事ならば受注すべきと考えています。
なぜなら、ミッションに沿った仕事は、社会に貢献できるだけでなく、自分自身の成長にもつながるからです。逆に、高単価であってもミッションに沿わない仕事をしていると、どこか心にモヤモヤが残ります。それが積み重なると、やがて「自分は何のためにコンサルタントをしているのか?」という根本的な問いにぶつかることになります。
途中で抜けるべき案件もある
どんなに魅力的に見える案件であっても、途中で抜けるべきケースも存在します。たとえば、
- コンサルの依頼者が本気ではないと感じる
- コンサルタントを単なる事務要員としか見ていない
- どう考えても相手の言い分がおかしく、合理的な議論が成立しない
こうした案件に関わり続けると、モチベーションが低下するだけでなく、クライアントの成長を阻害し、自社の信頼やブランドにも悪影響を及ぼします。無理に付き合い続けるのではなく、適切なタイミングで撤退する判断も重要です。
コンサルティングファームで働いていたときも、上司が案件を打ち切る理由が分からなかったことがありました。しかし、シニアマネージャー、ディレクターとなった際には、案件にかかわることによるリスク、お互いが価値を認め合えなくなった状況での継続が誰も幸せにならないという場面に多数遭遇したことで、当時の上司の判断が後になって理解できたこともありました。
仕事を断ることの難しさ
とはいえ、仕事を断るのは決して簡単なことではありません。明らかに合わない案件でも、「断ったら次の仕事がなくなるのでは?」という不安が頭をよぎることがあります。「ここで打ち切りましょう」と伝えるのは勇気がいることですし、相手にとっては裏切られたと感じるかもしれません。
実際、仕事を断ると、その後数週間はモヤモヤすることが多いです。しかし、ここで大切なのは「軸をブラさないこと」 です。単なる頑固さではなく、自社が大事にすべきものを守ることが重要です。一度この軸を崩してしまうと、やがて会社としての方向性がブレ始め、結果として会社の存在価値そのものが見えなくなってしまいます。
ミッションを常に考える
コンサルタントだけでなく、どんな職業でも、仕事を選ぶ基準は単なる売上や報酬額ではなく、ミッションに沿うかどうか、自分たちの成長につながるかどうか という視点で考えるべきです。特にコンサルタント業では、どんなに魅力的な案件でも、
- クライアントが本気でない
- このまま続けても双方が幸せにならない
- 期待値のズレが埋まらない
こうした場合は、勇気を持って手を引くことが必要です。これは逆もしかりで、コンサルタントを雇う側も、コンサルタントをどう活用するのかを明確にし、適切な関係を築くことが重要です。
仕事を断ることは、受ける側、提供する側、双方にとって決して楽なことではありません。しかし、それを乗り越えることで、双方の軸を守り続けることができます。その結果、自分が本当に価値を提供できる仕事に集中し、より大きな成果を生み出すことができるのです。その先に、高付加価値サービスの提供が活性化し、社会全体の景気向上にもつながるのではないかと考えています。
皆さんはどうお考えでしょうか?
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辻村 裕寛