久しぶりに父とスーパーマーケットに行った。私は酒のつまみを探しに、そして父は“半額”をお目当てに出かけた。
その日は運よく、半額シールが貼られた惣菜が豊作だった。父が狙っていた惣菜はなかったものの、店内の半額祭りに遭遇し、満足げな表情を浮かべていた。
割引商品は誰しも好きだと思うが、私の父の執着心は異様だ。私は彼のことを「半額おじさん」と呼んでいる。友人と家族の話をする際も「父」ではなく「半額おじさん」と呼んでいるので、「最近、半額おじさん元気にしてる?」と、友人からもそのあだ名で呼ばれている。ちなみに最近は私も友人も呼び方が雑になり、「おじさん」を省略し、「半額」と呼んでいる。
本題に戻るが、父の半額への執着心はすごい。例えば、近所のスーパーに関しては、半額シールを見ただけでどこの店のものか判別できる。もちろん、最も重要な情報である半額シールが貼られる時間帯も、各スーパーごとにしっかり把握している。ちなみに彼曰く、スーパーに関係なく悪天候になると、半額シールが貼られるタイミングが前倒しになるらしい。
なぜこんなにも半額にこだわるのか? もちろんお得だからという理由もあるが、それ以上に、過去に半額で何かを手に入れたときの高揚感が、彼の中に深く刻まれているのだろう。実際、本人も「あの瞬間の快感が忘れられない」と語っていた。
ここ数年は、半額シールを見た瞬間、特に必要がなくても手が伸びてしまうらしい。母は「もはや病気だ」とぼやくが、父にとっては日常生活のお楽しみタイム。半額シールに目を輝かせる姿を見ると、決して大げさではなく、彼の生きる活力なのかもしれないと思える。だからこそ、彼が半額シールに興味を示さなくなったら、おしまいだと思っている。
とはいえ、まるで獲物を狙うかのように半額シールを探しに惣菜コーナーに向かう父を見ると、一緒にスーパーに行くのはちょっと恥ずかしいなと、改めて感じるお買い物の時間でした。
