ドッカンボッカン映画のせいで

 数カ月前に愛車を手放し、現在は車なしの生活を送っているが、ふと無性にドライブがしたくなる時がある。特別運転が得意というわけではないが、ドライブは私にとって一種のリフレッシュだったのだろう。

 ただ、車を所有するうえで一つだけ苦手なことがあった。それが、給油作業だ。

 私はガソリンスタンドが苦手だ。大人になってからは多少マシになったものの、幼い頃は本当に怖くて、ガソリンスタンドに入ると車内で目を閉じていた。だからこそ、燃料計が3分の1を切ると「行かなきゃ…」と気が重くなった。自分の車なのだから自分で給油するしかないと分かってはいるが、人間というのはずる賢いもの。メーターの針が減ってきたタイミングで、あえて父に「うちの車で買い物行ってきてよ」と誘い、「あ、ついでにガソリンも入れてきて!」とお願いしたことが何度かある。

では、なぜガソリンスタンドが怖いのか?

 明確な理由はないが、たぶん父がよく観ていた映画の影響だと思う。

 父は、液体燃料が爆発する”ドッカンボッカン”映画を好んで観ていた。要するに、タンクローリーがガソリンスタンドに突っ込んで大爆発するシーンを、私は父の隣で何度も目にしていたのだ。そのせいで、「ガソリンスタンドには爆発の危険がある」というイメージが幼い私の中に刷り込まれてしまい、大人になった今でもその恐怖心が消えないのだと思う。

 ちなみに、そのドッカンボッカン映画の影響かもしれないが、私は貨物列車も少し怖いし、送電塔も怖い。

 貨物列車は何か燃えやすい液体を運んでいるのではと勝手に想像してしまうし、送電塔には何万ボルトもの電流が流れている。囲いには「危険!近づくな!」と注意書きされているが、そんなの言われなくても分かる。ピカチュウの十万ボルトは、映像上とてもポップに描かれているが、現実の高圧電流は文字通り、命にかかわる非常に危険なものだ。

 私が怖いと感じるものは、確かに一定の危険性を持ってはいる。だが、そこまで過剰に恐れてしまうのは、やはり幼少期に父が休日に観ていたドッカンボッカン映画の影響なのだと改めて思う。

 今度実家に帰ったときには、父にちょっとだけ文句を言ってみようと思う。