新規事業検討プロジェクトと成功確率を上げるポイント

【お客様】

  • 顧客名:大手通信・映像機器企業
  • 規模:社員約1,500人、主に経営改革および各事業部の課長クラスが対象
  • 期間:2010年10月~2011年3月 (前半3ヶ月:新規事業アイデア選定、後半3ヶ月:新規事業コンセプト作成)

【概 要】次期中期経営計画では新規事業を含めたい

通信・映像事業での強みを持つが、現在の主力事業は製品単体販売に依存している。付加価値のある新規事業を立ち上げ、全社事業ポートフォリオを見直し、次期中期経営計画に売上・利益改善につなぐ内容を盛り込みたい。

【依頼背景】経営企画部門を後方支援

経営企画部門は、経営層から中期経営計画の策定を依頼されたが、本社および工場を巻き込んだ検討は自社だけでは進めにくく、新規事業のアイデアの広がりにも懸念がある。そのため、コンサルタントの支援を受け、市場調査を基に将来に向けた事業の検討を行いたい。

【手順と成果物】新規事業アイデア選定

  1. 事業方向性の確認
    • 中期経営計画で経営層が目指す会社の方向性を確認
    • その方向性を基に、新規事業テーマを複数設定
  2. 調査(PEST/SWOT分析)
    • 5年先を見据えた市場の外部環境をPEST分析で調査
    • 企業リソース(人・モノ・カネ・技術)を洗い出し、強み候補を設定
  3. アイデア出し
    • 調査結果を基に、クロスSWOT分析を使ってアイデアを多く抽出
    • アイデアを分類し、具体的なテーマとして20項目程度に設定
  4. スクリーニング(アイデアのコンセプト化)
    • 20テーマのコンセプトを設定し、それぞれの市場を調査してトレンドを確認
    • 各アイデアを事業規模・成長性・利益率などの指標で整理
  5. 報告およびテーマの選定
    • 中長期計画に組み込む事業コンセプトを選定
    • 新規事業をコンセプトレベルで経営層にプレゼン

【事例からのポイント】

結果として、5つ程度の事業コンセプトが選ばれ、ビジネスモデルの具体化に進みました。2010年当時の取り組みであり、防災・安全面を意識した映像や音声機器のソリューションが注目されていましたが、現代に通じる要素もあると感じます。

当時、私は駆け出しのコンサルタントとして、主にフレームの準備や検討結果のまとめ役を担いました。以下は新規事業推進やコンサルタントの活用における重要なポイントです。

1. 新規事業の成功確率が低い背景

  • 一般的に新規事業の成功確率は1000に3つと言われますが、プロセスを踏めば一定のアイデアは出ます。
  • しかし、アイデアは社内承認の段階で少なくなっていき、更に責任の所在が不明確だとさらに減ります。
  • 最終的に事業立ち上げに必要な社内リソースの配分で実現可能性が低くなることが多いです。

2. 筋の良いアイデアを作るための仕組み

  • アイデアを出すためには、情報収集を常に行っている人でなければ難しい場合が多いです。
  • 従って、情報収集時間を確保すると質の良いアイデアが出やすくなります。
  • 目安は約2ヶ月で、アンテナの感度が高まる時期です。
  • アイデアは無からの創造ではなく、既存のものに新しい要素を加えて考えるのが基本です。

3. コンサルタントの上手な活用方法

  • テーマが明確であれば、その分野に詳しい「業界特化型コンサルタント」の方が良いアイデアが出ます。
  • プロセスコンサルタント」は、アイデア自体は期待しづらいですが、検討手順や場づくりが得意分野です。
  • 「業界特化型」と「プロセス型」を使い分けて活用することが重要です。

近年ではデザイン思考やアジャイルなど、新規事業成功の手法が増えていますが、上記の3点は時代を問わず有効だと感じます。自社で取り組む際やコンサルタントを活用する際の参考にしてください。ネクサライズコンサルティングはプロセスコンサルタントにプラスしてデジタル・イノベーション×製造業・IT業につよい会社です。ちょっと話を聞いてみたい、メールでやり取りしてみたいという方はこちらからご連絡ください。

辻村裕寛

代表取締役兼CEO


東京都台東区の下町生まれ。IT業界で約10年、コンサルティング業界で20年弱の経験を持ち、ディレクターを経て独立。現在は、中小企業診断士およびPMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の資格を活かし、大企業から小規模事業者まで幅広い規模の企業にサービスを提供しています。また、コンサルティングノウハウに関するコラムの執筆や研修講師としての活動も行っています。